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エリザベート千穐楽によせて・花總まり様

2015年、もっともチケットが取れなかったミュージカル、エリザベートが千秋楽をむかえました。

まずはキャスト・スタッフの皆様におめでとうとありがとうを言いたいと思います。
 
こんなにも素晴らしく、こんなにも心を震わせてくれて、こんなにも苦しくなるほどの喜び感じられるミュージカルを与えてくれて本当にありがとう。きっとこの先、何年間も語り継がれるだろう舞台を成功できて、おめでとうございます。
 
子役の松井君以外は一通りWキャストも見ることができたので、その感想を残しておきたいと思います。これも、自分のエリザロスを鎮めるためなので、もろもろ説明とかはスッとばします。
また、蘭乃さんに関してはもう思い出したくないし、語るべきものも持たないので何も書きません。再演は喜んでいますが、彼女の再登板は望んでいません。
 
 
もうもうもう伝説の‼花總シシィをまた見れるとは‼‼‼
何というか、花總さんの場合は演じているのではなく、本当に「エリザベートとして」そこに生きている感がある。幼くかわいらしい少女から圧倒的な気品、美貌、迫力を持った絶頂期、そして苦しみを得るごとに固く閉ざされ孤立していく姿…すべてが素晴らしかった。
 
初日挨拶で井上くんに言われていたけれど、日本エリザベート界における伝説であり、その役を再び演じること、しかも東宝版で演じることは花總さんにとっても凄いプレッシャーだったと思う。観客の期待も、他の出演者とは段違いだったはず。少なくとも私の周りはみんなそうだった。自分が作った最高記録を自分で塗り替えなくてはならない。そんなとんでもない期待を大きく大きく上回ってくれた。そこに至るまで、どれだけの努力をしたのだろう。ご自身で言われる通り、決して歌唱力があるタイプではない。苦手な音域もあるだろう。でもそんなことは本番では全く感じさせない。
なによりただ歌が上手いだけではない。すべての歌に、息遣いに視線の一つに一つにエリザベートとしての感情が生きている。
 
まず最初に出てきたときに、本当に10代前半の少女にしか見えない。表情しぐさそして声、すべてがかわいらしく生き生きとしている。トートに誘われるまま、寝ぼけているかのような夢の中にいるような表情で踊るロンド。フランツと出会い、「あなたが側にいれば」と幸せそうに歌う姿。結婚式で宮廷の人々で作られる大きな渦の中、人形のようにもちあげられ、くるくると回転させられるいとけない姿。最後のダンスで悲鳴を上げて怯え振り回される姿。ゾフィに対して「乗馬のけいこを」と笑顔で提案しそれをすげなく拒絶されてカルチャーショックを受ける。
そして大ナンバー私だけに。涙を流しながら絞り出されるような嫌よの1フレーズ。曲の盛り上がりとともに声も力強くなり、少女から女性へなっていく様がたった1曲の中に鮮やかに描かれる。特に8/23の私だけには絶唱だった。「たとえ王家に~」からの盛り上がり、気迫が凄くて見ているだけの私の全身に震えが来た。
娘を奪ったトートへの憎悪と怯えの表情。フランツに扉をあけてくれと懇願され、自らも傷つき迷う。その隙をトートに突かれても、顔をゆがめながら逃げないと叫ぶ。そして絶頂期、鏡の間へ。
あの瞬間の美しさをどうやったら表せるのだろう。劇場のすべての空気を1点に集め、みずから発光しているようだった。目を伏せ、フランツを見下ろしながら振り返るあの瞬間。私だけにと高らかに宣言し、扇で顔を鮮やかに隠してしまう。私はあの美しさのために劇場に通ったのかもしれない。
 
その絶頂を引きずったまま、2幕の「私が踊るとき」。段上からトートを見下ろし、まさに勝ち誇る。余裕の笑みで高らかに勝利宣言を歌う。いつもこのシーンはシシィとトートの緊迫と同調が同時に描かれる好きなシーンなんだけれど、やはり8/23の花芳は凄かった。階段を下りる際の圧が凄く、それに負けじと井上トートもさらにヒートアップしていた。王対王の戦い。
そして精神病棟のシーン。最初に見たときは、あの戴冠式からここへの流れがいまいちしっくりこなかった。あんなに絶頂期にいたシシィが突然孤独に苦しみだすように思えた。7/30に見たときに、ようやくハッとした。最初、患者を見ているときは、戸惑いながらも少し穏やかな表情だった。なんだったらヴィンデッシュに「跪くのはあなたよ」と声をかけるときもまだ穏やかな声だった。その後、病人たちから嘘をついている、正気の振りをしているとなじられてシシィの皇后としての仮面が外れる。ここはただシシィの孤独をあらわす場面なのではなく、シシィが自らの孤独に気づく場面だったんだ。それが花總シシィの演技でようやく分かった。体操室のシーンでも苦しみ顔を歪めながらも戦うことを決意する。ここも特に8/23が凄くて、あの壁ドンシーン、いつもは手でゆっくりとトートを押しのけるのだけど、もはや手すら使わずその気迫だけでトートを退かせて、されに「フフッ」と乾いた笑い声を上げる。そのまま「まだあなたとは踊らない」と壊れた笑顔で言う。その後のルドルフ葬儀でもまったく目に光がなく、周りを見えていないのがよく分かる。トートすらも見ていない。そのまま拒絶され呆然と階段を下り、ルキーニに写真を撮られた後は、叫び声をあげて退場していく。ここの声が日によって違って、「いやああああ」見たいな時もあれば笑い声のようなときもあり、その感じがまさに発狂寸前のギリギリにシシィが立っていることがよく分かって、見ていて息が苦しくなった。夜のボートは完全にフランツを拒絶しきっていないからこそ切ない日もあれば、完全に心が現世に無い日もあった。フランツ役やその日の流れで変わっているのかも。
 
そして圧巻のラスト。喪服を自ら脱ぎ捨てた瞬間、姿勢・声・表情・・・全てが一気に若返る。ここでの歌詞「泣いた笑った~」がこんなに共感できるシシィは彼女だけだ。
 
とにかく素晴らしい。もうそれしか言えないのが悔しい。世の中にはどんなに言葉を尽くしても説明できない美があるのだと花總まり様を見るたびに思う。